セミナーレポート

事前ガイダンス(輸出促進セミナー)

2010年11月8日(火)・9日(水)、それぞれ仙台会場・青森会場にて12月3日(金)に開催する商談会に参加しようとする生産者・食品事業者等に対し、当日の商談会の進め方のガイダンス及び商談に臨むにあたっての留意点等をレクチャーする「事前ガイダンス」を開催いたしました。また併せて、これから輸出を考える参加者のために「日本の農林水産物の輸出」をテーマに有識者による基調講演及び、実務講演として国際物流の実務担当者による輸出における物流面での留意点、銀行担当者による輸出時の決済面での留意点について講演頂きました。12月3日の商談会に向けて、有意義な場となった当日の状況をお伝えいたします。

当日の状況

1.jpg11月8日(火)、せんだいメディアテーク7階を会場として、
仙台会場事前ガイダンスが13:30より行われました。

まずは基調講演として、㈱総合市場研究所・代表取締役の渡辺 均氏。
渡辺氏には、「輸出産業としての農林水産業」をテーマにお話頂きました。

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<マーケティングの考えの導入>

1960年に会社を設立後、民間企業のマーケティングを
メインに仕事を進めてきた中、20年前から行政の仕事の
手伝いをするようになり、最近は千葉県農業会議等でもマーケティングアドバイザーとして参加している。そんな中、今の農水産業者に不足しているものがマーケティング不足であると大きく感じている。民間企業に比べどうしても戦略的・戦術的なものの考えに慣れてこれない環境の脱却を図るべきである。また、なぜ農水産業は現在厳しい環境なのか原因の究明を怠っている。民間であれば、例に上げるならば知人であるトヨタ関係者からよく「5回なぜと自問してみる」と聞く。つまりは原因を何度も突き詰めて考える仕組みを構築しているということ。マーケティングのノウハウを活かす農水産業は、輸出を考えた場合でも需要と供給を突き詰めて考えていくことが大事である。需要としては、消費者の動向をまさしく「消費者目線」で考えてみる。消費者は今何を買っているのかを考えてみる。注意深く探っていくと消費者は、実は「情報」を買っていることが見えてくる。「情報」とは、具体的には購入対象の商品に添付されている表示(メッセージ)のこと。上海市場でもメッセージを重要視した購入が拡大してきている。

<農水産業活性化の要点>

世界市場の中で考えた場合、既に効率至上の観点では日本は立ち向かえない状況にある。
大量生産・大量消費型ではなく、高付加価値型の農水産業及び輸出を考えていくべきである。
現在、日本の食材は世界で高価格で売れていることがポイントであり、食を支える文化産業としてトータル的に輸出を考えることが重要だ。また、一方向ではなく双方向の連携を促進すべきだ。日本国内の生産者と海外の生産者がお互い良い互換関係を築いていく。技術力の高い日本に海外から研修生を受け入れ、帰国後はその生産した物も受け入れ輸出入を双方向で行う新たな関係を築くことは、単に輸出入領域に留まらず様々な分野に良いメッセージとなり広がって行くだろう。今後は、前段で触れたような試行的な試みも行い日本の輸出を皆で考えて行きたい。
渡辺氏には、マーケティングの重要性、新しい農業振興・業態の創出を目指す考えについて講演を頂きました。


続いて実務講演の一人目として、秋田銀行 海外ビジネスサポート室 上席副長の榎 和浩氏。榎氏には「輸出における金融・決済における留意点」をテーマに実践的なお話を頂きました。

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実務講演の二人目として、仙台会場から引き続き日本通運㈱グローバルロジスティックソリューション部
専任部長増田 貴氏にお願いし、「輸出における物流面での留意点」をテーマに輸出手続きの流れ、輸出条件、コスト等、具体的なお話を頂きました。

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同様に青森では、11月9日(水)、青森市文化会館5階を会場として、青森会場事前ガイダンスが13:30より行われました。


まずは基調講演として、千葉商科大学学長であり日本の経済政策を専門とされている島田 晴雄氏。
島田氏には、「輸出農業立国のすすめ」をテーマにお話頂きました。

<東北農水産業の強み>

4.jpg最近の話題として丁度「TPP」が大きく取り上げられてい
るが、日本の輸出の95%は工業製品であり、関税が緩和されれば大いに日本は恩恵を得るだろう。一方、農水産業に関しては、海外からの安い農水産物に対抗出来ないという考えで、日本中いっぱいになっているが、一方で、農水産物が品質で戦えるのは日本だけという現状を活かせないだろうか。安心安全・高品質なので高価格でも売れる農水産物を生産している稀な国は日本だけである。世界の人口はこれから更に急なカーブを描き急増し、食料問題も深刻度を年々増している。この状況の中、本当に安心・安全な食物を生産している日本の海外からの評価も年々増すばかりである。東北のリンゴ・米等は既に海外でも高い評価を得て取引されている実績もある訳だが、それ以外の農水産物でも世界中がその素晴らしさを理解してもらえる可能性を十分に持っている。また、高品質である理由には、生産者の皆さんの努力があって始めて素晴らしい食物を生み出している事実もある。例えば「品種改良」。今は世界的に意図的な遺伝子組み換えで新たな品種を生み出しているが、そういった非自然的手法では無く、自然的な交配を繰り返し、あの全国的にも有名な「あきたこまち」は生まれた。それは長い多くの生産者の努力と繰り返しで自然に作られたものである。また「品質管理」においては、青森のほたての全プロセス管理を導入するなど、日本では当たり前な基準で進めているが世界では徹底されていない分野である。こういったイノベーションを持った国は他にないだろうし、素晴らしい生産体制を持った国であると、もっと自信を持つべきである。

<健康志向と日本食>

もうひとつ「日本の食」という括りで特筆すべきは、「ヘルシー」であること。健康志向の中、日本食ブームは今や世界を席捲している。日本食は自然食の要素を多く残し、フレンチのヌーベルキュイジーニにも影響を与える状況である。これからは、日本食を作る職人も含め戦略的に世界に打って出るべきであり、行政も大いに支援すべき。世界のニーズ(需要)にうまく繋いでいけるように民間と行政が一緒になって頑張るべきである。
島田氏には、東北農水産業の豊かな資源と大きな可能性をもとに東北の強みやこれからの輸出農水産業の育成課題等について全国の事例を加えながら講演を頂きました。

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続いて実務講演の一人目として、青森銀行 市場国際部の野呂 陵子氏。野呂氏には仙台会場と同様に「輸出における金融・決済における留意点」をテーマに実践的なお話を頂きました。

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両会場それぞれの講演後には、参加者からの質疑応答の時間を設け、活発な意見交換がなされました。後半では、12月3日に開催します展示・商談会のガイダンスとして、申込みから当日までのスケジュール、当日の商談会の進め方、当日参加予定のバイヤー及び取扱品目の案内、商談会に向けての留意点・事前準備等について、事務局から説明しました。